

作品展のとき、会場に訪れたお客様からいちばんたくさん受ける質問は、ハスを指差して「これは蜂の巣ですか?」というもの。
確かに一見するとまるで蜂の巣みたいです。

実は「ハス」という名前も語源はこの「蜂の巣」なのだとか。ハチスからハスになったのだそうです。な~るほど、昔の人も思うことは一緒だったわけですね。
私たちがアレンジに使うこの蜂の巣に見える部分は花托部分で、それぞれの穴に実がなります。凹凸がある割には、ラメやラッカーをかけたときに光沢が出て渋い趣をプラスしてくれます。また硬そうに見えますが意外にも軽く柔らかく、ハサミで簡単にカットできることから細工のしやすい素材でもあります。

たまにこの蜂の巣状の穴にまだ小さな実が入っていることがあり、撒いたらどんな花が咲くかしら・・・つい古代に想いが行ってしまいます。というのも、2千年もの時を経て発芽した古代のハス「大賀ハス」があるからです。
昭和26年、千葉市の遺跡の土の中から発見された2千年前の3つぶのハスの実は、研究者大賀一郎博士によってその年見事に花を咲かせました。世界で一番古い花「大賀ハス」、今では日本各地や世界に子孫が広がっているそうです。なんだか希望のわくお話ですよね。

ところでハスは水中に地下茎を伸ばし、そこから水面に向けて茎を出します。この地下茎はおなじみ、食用のレンコン(蓮根)ですね。花のほうはレンゲ(蓮華)と言います。
「ひらいた ひらいた なんのはながひらいた レンゲの花が ひらいた」のレンゲはこのハスの花をさしているそうです。私はずっとれんげ草のことだと思っていましたが、違ったのですね。ハスの花が一瞬で咲き終わってしまう様子を歌っているのだそうです。

泥の中から顔を出しながらも清楚な佇まいを崩さないこのレンゲ(蓮華)は、仏教でも極楽浄土の象徴とされています。
そうそう「ハス」と「スイレン」は同じ水中に花を咲かせますが、違う種類なんです。スイレンの葉には切れ込みがあるとかいろいろ違いがあります。でもいちばんの違いはハスの葉には水をはじく仕組みがあることなんです。葉の上で水が玉になってコロコロする・・・そう、ハスの葉は水中にありながら決して濡れないんです。イメージが浮かびました?
自然が先に作った植物は完成されていて、後から登場した人間である私には興味がつきません。
カラコレスのドライアートが「造形」だけで終わらないエネルギーを持っているのは、素材に「ものがたり」があるからかもしれませんね。