

全体が与える雰囲気からモス(苔)と表現していても、実は苔ではない素材も多いのです。トナカイの餌になるフィンランドモスも、和名ウメノキゴケのシルバーモスも苔ではなくて地衣類と呼ばれる植物でした。そしてこのスパニッシュモスもしかり。和名をサルオガセモドキといいます。

サルオガセと言うのは森林で木から下がる仙人の白いひげのような地衣植物です。・・・が「モドキ」と付く。
そう「サルオガセ」ではないのです。まったく何とややこしい!
サルオガセモドキ(スパニッシュモス)はパイナップル科チランジア属。え?このフワフワがパイナップルの仲間?
しかもエアープランツなのです。
エアープランツは葉に特殊な水分と養分を取り込む組織があって、空中に吊るしておくだけでも育ちます。
スパニッシュモスこと、このサルオガセモドキはそのエアープランツの代表的な種類なのです。

根はなくて、銀白色の細い糸みたいな茎と葉がからみ合って成長していきます。
クッション材によさそう、と思ったら、皆考える事は一緒のようで、原産国の中南米ではパッキング素材にも使われているそうな。
生育が旺盛な植物が暮らしに役立つ好循環を起こしているようです。
日本のドライの商品ではグレーやグリーンといったナチュラル系のスパニッシュモスが出回っていますが、デンマークで見たそれは実にカラフル。
問屋さんの商材の棚が色毎の素材に分けられて並べられていますが、その中に必ずテーマの色に染まったスパニッシュモスがあるのです。

ことに深い色、黒やワインレッド、ダークな赤、青、どれも素材だけで美しい。深い色の中に居ると不思議とリラックスできます。
日本の問屋さんに行くと、売れ筋がパステル系のようで、統一感のない子供っぽい色彩が氾濫していてとても疲れます。
が、ドライアートは天然の素材そのものがくすんだ色合いなので、あわせる色彩も深い色の方が落ち着きます。ただ残念な事にそのような提案が充分されていないのも、ドライの世界なのです。相変わらずドライフラワーと言えばかわいいリボンに小花のお土産品の世界が主流。それは私たちが提案するアートとは別なのです。

さて、植物の輸入は何度も試みましたが、検疫などなかなか面倒です。
物によっては成田で焼却処分になってしまったりと、せっかく仕入れても入ってこないものもあります。それでついリボンやアート製品や小物と言った、無難な仕入れに偏りがちです。
けれど、そのうちまた、こうした日本でポピュラーでない着色の自然素材も提案して行きたいと思っています。
素敵なものは一目瞭然ですものね。