




「あと残り30分です!」と私。
生徒さん「きゃーどうしよう、これってどう使えばいいの?・・・・・・ああそうだ、こうすればいいかも、そうだ、そうしよっと・・・あっこれって意外と面白いかも!」
いったい何が繰り広げられているかというと、卒業試験の一コマなのです。
上級まで終了した生徒さんが、卒業して自宅教室への道を進まれたり、更なるデザイン追求をするための関門。所要時間は2時間です。
あらかじめ用意された多種多様な材料をすべて使って、オリジナリティーのある大作を仕上げます。材料を見た瞬間からカウントし、デザインをくみ上げ作品にまとめあげるまでが2時間。その時々によって2メートル近い大ぶりの枝が用意されたり、フレームやポットや、またそんなベースになるものが何も無いときもあります。
そこにさまざまな木の実やお花やりーフ類、コケ、ボール、ネット・・・いったい何が用意されているかわかりません。2時間しかないのですからあまりに細かい作業に気をとられていたら間に合いません。
あわてて目の前の素材をワイヤリングしたりしないように、落ち着いてデザインをくみ上げる必要があります。途中のデザイン変更は大変なロスになるからです。
しっかりイメージが出来て、その作品が2時間以内に制作し終わるものというめどが付いたところでワイヤリングの作業に入ります。
ところが製作途中でもいろいろとハプニングは起きます。素材が硬くてワイヤーが挿さらなかったり、組んでみたらパーツが大きすぎてバランスが取れないなどなど・・・。
そんなとき冒頭の風景が繰り広げられるわけです。
私からのアドバイスは一切なし。だって試験なんですもん!
「ごめんね、助けてあげられないの」と非情な励まし?を投げかけながらも見ていると、皆さんそれぞれに自分で気づいて乗り越えて行くのです。
迫ってくる終了時刻を気にしながらも、うまくいかない手もとの作業とにらめっこ。その集中力といったら、声をかけるのもはばかられるくらい誰もが普段とは別人になります。
そうして完成した作品は、今までの時間の許す限りで作ったものとは一味もふた味も違う冴えた出来栄えになります。
「やったわ~」という晴れ晴れとした表情の皆さん。無事に「締め切り」を超えました。
それを見て思うのです。またひとつ力をつけられたなと。それが見たくて卒業試験を審査しています。
だれでも「締め切り」の前ってたいてい追われている状況で、早く楽にならないかなあなんて思いながらバタバタしているけれど、通り過ぎれば達成感ですっきりしています。
「継続」ってただ続けることじゃなくて、用意された「締め切り」を守ることにあるような気がするんです。そこには一定の完成度も要求されて・・・。その繰り返しが「継続」?
だから「締め切りは力なり」なんて勝手に思っています。
このカラコレス通信も毎月継続して8年目になりました。
今月号から後は装いを変えて3ヶ月に1回発行の季刊誌に変更になります。
今後はまた新たな締め切りを自分に課して、何かを「継続」していくことになると思います。今までお読みくださった皆様ありがとうございます。
そして生まれ変わる「カラコレス通信」を、今後とも引き続きよろしくお願いいたします。
カラコレス・プリザーブド&ドライアートスクール代表 坂本裕美