




家の壁に絡まるもっこうバラが今年も黄色い花を満開につけた。
同じ場所に植えてあるアイビーもバラに負けじと成長をはじめる季節。
2年ほど前の同じ頃、通信のメッセージで「小さな白トカゲのちかちゃん」について書いた。
玄関脇の明り取り窓の外側に張り付いてアイビーの葉に身を隠し、家の中からもれる光を求めてやってくる虫たちを捕獲していた頭脳派のトカゲの赤ちゃん。そのたどたどしい虫取りの様子がかわいくて、思わず「ちかちゃん」と名前をつけた。
夕方になると現れて「虫取り」するちかちゃんを、窓の内側からがんばれ~と応援していたのだ。
一年後、少し大きくなってもこの省力捕獲方法を忘れずに、またアイビーの葉が茂るころ同じ窓に現れた。
前よりも虫取りは上手になっていたが、アイビーのほうも、トカゲの子と同じように成長して葉が大きく茂り窓を覆うようになっていた。
もれる明かりが少なくなって虫が集まらず、捕獲しにくくなったと見えて、ある日を境に姿を見せなくなった。
どこかに捕獲場所を変えたのか、方法を変えてトカゲらしく正統派「虫取り」に精を出しているんだろうなと思っていた。
ところが一週間たったある日、思わぬ場所で対面することになった。
2階のレッスン室の窓の外側。
ガラス戸と網戸に閉じ込められた形で、骨と皮ばかりにやせて動かなくなっていたのだ。どうしてこんな・・・。
ことの顛末を推測すると、つまりこう。
玄関脇の明り取り窓がアイビーの葉でふさがれ虫取りに不都合になり、もっと大きな窓を探して2階まで上がってきたらしい。
遅くまで明かりの漏れるレッスン室の窓にくっついて、おなかいっぱいお食事をしたに違いない。
ところがそこには予測もしない天敵がいたのだ。ほかでもない私。
何かの拍子に窓を開けた際、網戸をちかちゃんのいるガラス戸のほうへ動かしてしまったらしい。ぴしゃり!
かわいそうに、突然ガラス戸と網戸の間に挟まれたちかちゃんは、外へ逃げることもできず虫を捕らえることもできなくなってしまった。味わったであろう恐怖を思うと胸が詰まる。
ごめんね・・・。
今でも、たまに玄関脇の明り取り窓の外で、カマキリや小さなトカゲの子が虫を捕まえるのを見ると、つい余計なお世話を言いたくなる。
「人をあてにしちゃダメよ」
この時期になると思い出すちょっと悲しい出来事なのだ・・・。
カラコレス・プリザーブド&ドライアートスクール 坂本裕美