




いつもお世話になっているイタリアンレストランのメニューはとても多彩だ。
・・・と今すぐここで具体的なメニューを紹介できない記憶力のなさが残念だが、とにかく品数が多い。メニューを最後まで見るのが大変なくらい。
スクールのパーティーなどもここでお願いしているが、毎回違うメニューでどれもすごく美味しい。
そこのマネージャーさんは常ににこやかで、お客様のオーダーにも「○○と○○と○○のセット、ソースは○○で・・・食後の○○は○○でございますね。本日のケーキは○○と○○と○○と・・・」と、つかえることもなく涼しい顔で応対している。すごい、どうしてあんな複雑なメニューが頭に入っているんだろう。
いつか彼がしどろもどろになるくらい面倒でやっかいなオーダーの組み合わせを考えて、実験したいものだと機会を狙っている。
ところが、そんな私が友人とそこで食事するとき何をオーダーするかと言うと「本日のおすすめ」。オーダーは複雑どころか数十秒で完了。おなかがすいているときにむずかしい事を考えられなくなってしまうのだ。悲しい。そんな原始人に近い状態のときに「今日のおすすめはこれとこれとこれ。さああなたならどうする?」とシンプルな問いかけをしてもらうととても助かる。(あくまでも私個人の場合)
友人が聞けば「あなたは食に対してこだわりが無さすぎだからよ」と言われそうだが、そうでもない。食事を始めて少しおなかにたまったとき、ああ他の選択肢もあったなって我に返るもの。特に目の前で友人が複雑で美しい組み合わせの食事をしている時・・・。
「本日のおすすめ」のようなパッケージがあるといいなと思うのは、急いでいる時や自信がない時、はじめての時、それに対して知識が無い時、などなど。
逆に時間に余裕があったり、何度か試してそれに対して知識がついてきたりすると、それでは物足りないときも来る。
私たちがお客様にレッスンをしているときも同じで、始めたばかりのお客様は見本に忠実にアレンジする事に心血を注ぐ。けれど何回か制作を経験してなれてくると、少しずつ「その人なりの挑戦」が加わって面白い作品になってくるのだ。
「微差の積み重ね」が、パッケージに収まりきらない陰影を表現してくれる。
よぉし、今度そのお店に行ったら私も複雑でエレガントなオーダーにトライしよう。
とは言うものの、私にとっての空腹時はいつも原始的な緊急事態なので、やっぱり美味しいパッケージがあると助かるのだ。
カラコレス・プリザーブド&ドライアートスクール代表 坂本裕美