




日々の暮らしの中で、デザインの参考になりそうなシーン、仕事のヒントになりそうな事がらを写真に収めたり、メモで残したりするのが習慣になっている。
デンマークに仕事で旅行に行ったりすると、それはもうフル回転になる。
どの一瞬も、どのシーンも残しておく価値があるから・・・。
子供を連れて1ヶ月間コペンハーゲンに滞在したときには、2000枚の写真と日記を残す事になった。
滞在したアパートメントがとても素敵な空間だった事もあるが、一歩外に出ても、あの窓も、この小路も、そこで遊んでいる子供たちも、空の色も、お店に並んでいるドライアートも、ディスプレイも、大きな会場のイベントも、お皿の上のおいしそうなサンドウィッチまで・・・皆どれをも余すことなく伝えたい・・・そんな気持ち。
これはでも、けっこう集中力のいる大変な仕事。
一瞬も気が抜けなくなってしまう。
しかも私はプロではないので、写真に撮ったシーンと、実際に自分の心を動かしたシーンがほんの少しだが、微妙にずれてしまう。
後で見て、素敵だけど何でこの写真撮ったんだっけ?なんてことも起きる。
それを言葉で補ったりもするけど、ここでもプロでない私の表現力には限界が。
一人の中でもこんなに誤差が出るのだから、媒体がたくさん入ったらずいぶんと伝えたいものが変わってしまうだろうなとも思う。
そう思いながらもひたすらお伝えしているのは、その一瞬の「素敵」が積もり積もって今のカラコレスを形作っているから。
昨年、信濃毎日新聞社から出版した私の本は、長い間の「ちいさな素敵」が積み重なってできた本ともいえる。
黒い紙に、レンズ越しに太陽光線を集めて焼穴を開けるような地道な作業。
本を作るつもりなんてさらさらなくて、ただただ「ちいさな素敵」を集めてい
たら、いつの間にかそこに「世界」ができていた。
ただ、ごくたまに、そうやっていつも自分が媒体になっている事に疲れを感じることがある。
感じたことをとどめておけずに、すぐ次の表現に移る準備をしてしまうから。
たとえば、この次の旅にでたら、どんなに心を動かされてもそれについては語らない、記録に残さない・・・自分だけ、自分の思い出だけにしてみるとか。
それが私にとっての最高の贅沢。
そう書きながら、たぶん無理・・・と、もうひとりの自分が言ってる。
だって仕事熱心で、おせっかいなわたしのこと、そんな素敵なシーンに出会ったらお伝えせずにはいられないもの。
山ほどの情報をお届けして、共感していただけるものがあれば幸いだし、なくてもそれはそれ、人それぞれ・・・。
結局、紆余曲折の末いつものスタイルに落ち着くのでした。
カラコレス・プリザーブド&ドライアートスクール代表 坂本裕美