カレンの工房へ

デンマーク、ユトランド半島の端エスビャオから、60キロはなれたカレンの工房へ、仕入先のラースが車で連れて行ってくれるという。
カレンはラースの大きな取引先で、スクールとドライアートのショールームを経営している。
工房は外見は納屋のように細長くてそっけないが、一歩中に入ると洗練されたドライアートやポット、キャンドル、資材たちが床や壁にきちんと整理された仕事場兼ショールームだった。
カレンは54歳。ショートカットにとびきりの笑顔の似合う小柄な女性。
デンマークの有名アーティスト、テ・アンデルセンの下で長い間アシスタントを務めてきたという。
私が訪れたときは、来週始まるイースターのショウの準備でとても忙しいとき。それなのに2時間半もの間、仕事の手を休めて私の質問に答えてくれたり、デモンストレーションまでしてくれた。

ここは決して便利のよい場所ではなく、コペンハーゲンからも半日かかる。
にもかかわらず、年に3回開くデコレーションのショウの時には、何千人もの人が訪れるのだと言う。
昨年のクリスマスのショウの写真を何十枚もプレゼントしてくれた。見るとやはりここでもテーマごとのカラーに分けたテーブルに、アレンジがセットされている。
赤、グリーン、ゴールドのテーブル。白、グリーン、黒やグレーのテーブルなど。面白いのはドライのアレンジだけでなく、テーブルや、いす、クッション、背景になる布やキャンドル、小物と言った付属品がレイアウトされて完璧な空間を作っていること。
聞けば家具類はアンティークも多いと言う。お客様は家具も含めてアレンジをオーダーしていくそう。また、実際にディスプレイ商品を買うばかりでなく、
今年の自分の家のデコレーションを、ショウを参考にしながら考えてもいくと言う。センスもよくなるはず。

工房のあちこちにイースター向けのやわらかい色調のポットが置かれている。
あまり見かけない微妙な色ばかりなので、「デンマークではこんなにデリケートな発色の商品を仕入れることが出来るの?」と聞くと、すべて自分たちでペイントしていると言う。
ほしい色がなければ自分で作る。キャンドルまで塗ることがあるそう。色へのこだわりはプロならでは。
2~3人の女性たちがアレンジを作ったりと、ショウの準備をしている。作業の途中にもかかわらず、どこもかしこもきちんと整理されているのがすばらしい。
最新のデザインのアレンジがおかれている、立ち入り禁止の部屋まで案内してくれる。
ポットに編みこんだガーランドを載せた作品やスタンド型のリースなど、イースターのアレンジが、出番を待っているかのようにならべられている。
背景のコンクリートの壁がモダンなデザインをいっそう引き立てている。
日常で素敵に飾れそうな、身近なアレンジばかり。

いたるところに張ってある「撮影禁止」の紙を、カレン自身がはいで「好きに撮っていいわよ」。
ラースとカレンに、たくさんお世話になったお礼を言って、コペンハーゲンへの長い帰り道となる。
2004年 夏
ヘニングで行われたホームランエキジビション。
一日中かけて何百と言うブースを回り、終了間近。
ドライフライフラワーのブースでカレンを見つけた。3年ぶりの再会。
いきなり抱きついてきたカレンに「ラースは?出展しているの?」と聞けば、
そこはなんとラースのショップのブース。
社名を変えたから気が付かなかった。ラースに会うのも3年ぶり。
「いつでも勉強にいらっしゃい。歓迎しますよ。」
と相変わらずのカレンの笑顔が印象的。