




ハンプトンコートのフラワーショウを訪れた折、イギリスの個人宅の庭に伺いました。10年ほど前の7月、薔薇がきれいに咲き誇る季節です。
個人といえども広大な庭が、植物の色調、質感により完璧にデザインされています。
たくさんの植物が無数に植えてあるように見えますが、家主の奥様によると、庭を造った当時は、一種類の植物につき1,2株しか植えず、かなりすき間を取ってあるそう。
宿根草が毎年大きく株分かれしてスペースを埋めていき、それに伴って雑草も生える場所がなくなってきたとのことです。
一方、当時日本ではやり始めていたイングリッシュガーデンは、詰め込めるだけ詰め込んで、出来上がった一瞬が作品であるかのようでした。
命あるものを扱うときは、そこに「時の経過」を感じないと、奥行きのある美しさを表現できない事を知りました。
また、ひとつひとつを根気よく大事に育てていけば、あるときを境に大きな広がりに行き着くことも・・・。
この秋、信濃毎日新聞社より、私の著書「プリザーブド&ドライアートの世界―出会いは時を超える」が出版となりました。
担当の編集者と構想を練るだけで1年。でもそれからあとの撮影、編集、出版までは3ヶ月という超スピードです。
ドライアートが大好きな人にとって「情報満載で、夢があって、のんびりゆっくり楽しめる本」・・・こんな欲張りなねがいを閉じ込めた本です。
サブタイトルは「-出会いは時を超える」。
出会いこそは、私にとって宿根草のひと株ひと株にも当たるものです。
仕事を始めてからの10年、いえそれまでのすべての年月を通して、出会った人たち、忘れられないシーンや出来事、それらすべてがつながって今回の出版となりました。
どれひとつ欠けても、だれひとり出会わなくても、この本が作れなかったことを思うと、感謝の気持ちで胸があつくなりました。
次の10年、今度はどのような庭の景色が広がるか、まだ想像もできませんが、手もとにあるひと株ひと株をまたゆっくり育てていくつもりでおります。
いままで出会ったすべての方に、心からの感謝をこめて。
カラコレス・プリザーブド&ドライアートスクール代表 坂本裕美