バランスをとること、くずすこと
春になって、近所のカイロプラクティックに通い始めました。レントゲンを撮るたびに、背骨が右に曲がっていると指摘されるので、そろそろ治療しようかなと思い立ちました。
先生にお話を伺うと、背骨だけが単独で曲がるわけではなく、まず骨盤のゆがみがあって、それを受けてバランスを立て直そうとして背骨がゆがむのだとか。体って全体でバランスをとっているのですね。よく出来ているなと、感心しました。
何にでも当てはまるこのバランス。日ごろのドライアートの制作の中でも、もちろんバランスをとることは大切ですが、それに慣れてきたら、あえてバランスを崩すレッスンも必要です。
(いまバランスとるのが大事!って言ったところなのに?)
それには、完成した作品が置かれた状況を、思い描いてみるとよいのです。
少々話はそれますが、作ったドライアレンジを家で飾るとき、テーブルや壁が作品を引き立てない色のときは、ちょっと悲しくなりませんか?そういった周りの要因って簡単に変えられるものではないですよね。
しかも置きたい場所はここしかない!・・・みたいな。
そんな時、ほんの少しの工夫で周りの風景を作品に合うものに変える方法があるんですよ。
アレンジの中に使われている一色、またはアレンジに合う色を選び、その色の和紙や布を用意します。
それをベースに敷いてから飾ると、見違えるほど引き立つのがわかります。
和紙も、最近では厚手の揉み紙などで、さまざまな色のものが売られていますから、何種類か用意しておくと良いですね。
壁の場合は、直接貼らずに、フレームなどの中に背景として貼った上に作品を飾ります。
変えられない要因はあきらめて、そこにひと手間足すことで、作品に合ったプチ空間を作り出します。小さなアレンジ一つだけ置くより、モチーフを組み合わせたほうが格段に奥行きのある空間に仕上がりますし、さらに木の実など、中に使われた素材をアレンジの根元に、ひとつふたつ添えてみても、動きが加わって楽しくなります。
…で、このときにですね、アレンジ自体のバランスがあまりに取れていると、こじんまりと収まってしまうのです。
遊びがないっていうか。
それ自体は完成度の高い作品で良いことなんですけど。
「置かれた空間まで含めて」作品…といつも思っています。そのために、作品にあえてスキをつくり、もう一回り大きい空間で完成させる…これ上級ですが、ぜひ挑戦してみてください。
ディスプレイのようなお店の装飾の場合は、さらに環境が限定されます。照明の明るさ、壁の色、柱の位置や部屋のつくり、置かれている家具の色やデザインまで考慮に入ります。それによって映える色、映えない色、生きてくるラインなどなど、デザインのほうも絞られてきますから。
主役はやはり「場が持つ空気」でしょうか。それとなく装飾があることによって、お客様が癒されたり、落ち着いたり、気分が明るくなったり、季節によってはゴージャスな雰囲気を楽しんだり。カラコレスのドライアートディスプレイにそんな効果があったらうれしく思います。
最後に、家で飾る場合でもどこでも、まずは場をきれいにすること。不要なものを片付けて(カラコレスのレッスンで作った古い作品なら、リメイクコースで作り直すことが出来ます。)、お掃除して、環境をまず整えます。
その上で、ベースに敷く布や、アレンジや素材といったプラス要素を加えていきます。ついついプラスの要素にばかり目が行ってしまうのですが、一番大切なのは飾る環境を整える、ゼロにすることです。これって作品を生かす決定打みたいです。
ドライアートの作品はそれ自体では成り立ちません。
必ず「置く場」があります。周りも取り込んでバランスを図れるようになったら…
カラコレスで言うドライアート上級の腕前です。
カラコレス代表
坂本 裕美