




戸隠の風景が一望できるとあるおうち兼ギャラリーで
鬼瓦のコレクションを拝見しました。
国宝級の鬼瓦がずらりと並びます。
「初期の鬼瓦には怖い顔の鬼はいません。」と
このギャラリーの主、駒澤たんどう先生。
仏門にも入られているカメラマンさんで
長い間仏像の写真を撮りためて出版も多く、個展もたくさん開催されています。
ライフワークは女優市原悦子の写真集。
東京での仕事に区切りをつけられて出身の戸隠へ今年の春から
移住されています。
お供え花のご縁で本日見本をお持ちしたところ、
その場で即撮影してくださるというのですが、
そこで使われた小道具に絶句・・・。
価値のある古い仏像や世界で10個しか作られていない、
インドを代表する仏頭のレプリカなどなど。
どう考えてもお供え花のほうが脇役に感じる品々ですが、
それらを脇に従え、カラコレスのお供え花が頑張って主役を張って
撮影していただきました。
さて先ほどの鬼瓦たちを拝見していると、
「この家にあるすべての瓦を合わせたより価値があるのがこの一枚です」と先生。
見るとそれは両手で軽く持てそうなしかも片側が欠けたシンプルな瓦。
その表面に唐草模様が浮き上がっています。
「奈良時代のものです。欠けているのが、なお作り方や成分がわかってよいのだそうです。」と・・・。
その細い線のように盛り上がった唐草模様は
のびやかで連続している中にもイレギュラーな動きがあってリズムも感じられます。
「これは型押ししたものですか?」とお聞きするとそうではないのだと。
型押しでなくてどうしてこんな繊細に隆起した線を
こうも滑らかに描けるのか。
朝から伺い午後になるまでたくさんの写真や仏像や刺しゅうや絵画などなど
見せていただいて、説明していただいてそのどれもが魅力的なお話でしたが、
それよりなにより、私の受け皿の少ない脳みそと視線はこの「天平のいらか」にくぎ付けになってしまったのでした。
ドキドキする。
繊細な仕事は人をドキドキさせる。
瓦一枚にドキドキしている自分にびっくりしながら
いまにも落葉しそうな金色のカラマツ林の中を下りてきました。